帯状疱疹と予防ワクチンについて
帯状疱疹は、水ぼうそうを引き起こすウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が原因です。幼少期に水ぼうそうにかかった後も、このウイルスは体内に潜伏し続け、免疫力が低下した際に再活性化し、帯状疱疹を発症します。最初は痛みを感じ、その後、身体の片側に水ぶくれを伴う赤い発疹が現れることが特徴です。
特に問題となるのは、発疹が目や耳の周囲に出る場合です。目に出た場合、視力障害や失明を引き起こす可能性があり、耳に出た場合は顔面神経麻痺を伴うことがあります。このような場合、入院治療が必要となることもあります。
さらに、帯状疱疹の治癒後も「帯状疱疹後神経痛(PHN)」という痛みが残ることがあります。この合併症は非常に頻度が高く、発症後3か月で約20%、6か月後には約10%がPHNに悩まされるというデータがあります。特に高齢者、女性、初期症状が強い方はリスクが高く、治療には神経に働きかける痛み止めや神経ブロックが用いられますが、副作用もあるため治療が難しいことが多いです。
ワクチンによる予防
帯状疱疹の発症予防には、生ワクチンと不活化ワクチン(シングリックス®)の2種類があります。ワクチン接種により、発症予防と重症化予防が期待されます。
- 生ワクチン(弱毒生水痘ワクチン)
- 2016年に50歳以上の帯状疱疹予防に認可されました。
- 60歳以上で発症率が約51%減少、帯状疱疹後神経痛も約66%減少すると報告されています。
- 効果は8〜10年程度持続しますが、免疫を抑える治療中の方や妊婦の方には接種できません。
- 不活化ワクチン(シングリックス®)
- 2020年に認可された新しいワクチンで、従来の生ワクチンよりも高い予防効果を持ちます。
- 50歳以上で発症予防効果は97%以上、帯状疱疹後神経痛に対しても88%以上の有効性が報告されています。
- 効果が長期間持続し、8年後でも84%以上の予防効果があります。
帯状疱疹のリスクは50歳を過ぎると増加し、80歳までに3人に1人が発症すると言われています。特に帯状疱疹後神経痛に苦しむことのないよう、早めの予防接種が重要です。
ワクチンの選択肢
それぞれのワクチンには長所と短所があるため、以下のポイントを考慮しながら選ぶことが推奨されます。
- 高い予防効果を重視する場合:シングリックス®
- 長期間の効果を期待する場合:シングリックス®
- 副反応を抑えたい場合:生ワクチン
- 接種回数を1回で済ませたい場合:生ワクチン
- 妊娠中や免疫を抑える治療を受けている方:シングリックス®