壊死性筋膜炎の症例を経験したため、診療所レベルで重要と感じた点を整理する。

壊死性筋膜炎といっても、起炎菌や病変の深さにより様々な分類が存在するが、実臨床では治療方針が大きく変わるわけではない。

そのため近年では、包括的に壊死性軟部組織感染症(Necrotizing Soft Tissue Infection: NSTI)という概念で扱われることが多い。

診療所において重要なのは「診断を確定すること」ではなく、「疑って早期に高次医療機関へつなぐこと」。

時間単位で進行しうる致死的疾患であり、外来での経過観察は極めて危険となる場合がある。

臨床的特徴

Triadとして以下が重要とされる。

• 病変の見た目に比して疼痛が非常に強い

• 進行が速い

• 皮膚が非常に湿潤

特に “Pain out of proportion” は重要であり、蜂窩織炎程度にしか見えないにもかかわらず、著明な疼痛を訴える場合は強く疑う必要がある。

その他、

• 水疱形成

• 紫斑

• 出血

• 皮膚変色

• 握雪感(crepitus)

などを認めることがある。

ただし、これらが出現する頃には既に進行している場合も多く、初期段階では所見に乏しいことも少なくない。

起炎菌

細菌学的には以下を考慮する。

• A群溶連菌(GAS)

• GCS / GGS

• クロストリジウム

• 市中MRSA

• polymicrobial infection

糖尿病や免疫不全患者では混合感染も多い。

また、

• 海水曝露

• 生魚処理時の受傷

などがある場合は、Vibrio vulnificus infection も念頭に置く。

リスク背景

以下の患者では特に注意が必要。

• 糖尿病

• 肝硬変

• 慢性腎不全

• 透析

• ステロイド使用

• 免疫抑制状態

• アルコール多飲

蜂窩織炎様の所見でも、これらの背景がある場合はNSTIを必ず鑑別に入れる。

診断

画像診断のみで判断するのは危険。

CTでガス像を認めれば参考になるが、初期では画像異常が乏しいこともある。

「ガスがないから否定」はできない。

最終的には外科的評価が重要となる。

• 切開

• 筋膜確認

• 壊死組織確認

• 培養採取

など。

診療所で画像を詰めるより、外科へ速やかにコンサルトする方が重要な場面が多い。

LRINEC score

補助的にはLRINEC scoreが参考になる。

• CRP

• WBC

• Hb

• Na

• Cr

• 血糖

から算出。

一般には6点以上で疑うとされる。

ただし、低値でもNSTIは否定できない。

スコアのみで除外するのは危険。

治療

治療の中心は外科的デブリードマン。

抗菌薬は重要ではあるが補助的な位置づけとなる。

壊死組織や血流障害により、抗菌薬のみでは制御困難なことが多い。

初期は広域カバーが必要。

• carbapenem

• TAZ/PIPC

• 抗MRSA薬

• clindamycin

などを状況に応じて使用する。

特に溶連菌感染ではclindamycinによる毒素産生抑制を意識する。

診療所で重要と思われる点

• 見た目以上に痛がる

• 数時間単位で悪化する

• 全身状態が悪い

• ショックバイタルを伴う

• 糖尿病などハイリスク背景がある

これらが揃えば、NSTIを積極的に疑う。

また、搬送まで時間がある場合は、紅斑境界をマーキングしておくと進展確認に有用。