脂質異常症とは
脂質異常症は、血液中の脂質バランスが崩れることで起こる病気です。具体的には、以下のような状態を指します:
- LDLコレステロール(悪玉)が多すぎる
- HDLコレステロール(善玉)が少なすぎる
- 中性脂肪が多すぎる
この病気は主に生活習慣や遺伝的な体質が関係しています。症状は通常ありませんが、治療を怠ると動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞など、命に関わる病気のリスクが高まります。
脂質異常症の診断基準:LH比とは
近年では、HDLとLDLのバランスが重要視され、**LH比(LDL÷HDL)**が診断に用いられることが多くなりました。
LH比の目安
- 1.5以下:健康な状態
- 2.0以上:動脈硬化が疑われる状態
- 2.5以上:心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高い状態
例)LDL 126mg/dl、HDL 42mg/dlの場合
126 ÷ 42 = 3.0 → 危険な状態
LDL(悪玉)コレステロールを下げるには
食事療法
- 控える食品
- 脂肪の多い肉類(牛・豚の脂身、加工肉)
- コレステロールが多い卵(1日1個まで)、バター、クリーム、チーズ
- 糖質を多く含む菓子、清涼飲料水
- 積極的に摂りたい食品
- 魚類(EPA・DHA含有):中性脂肪を低下させ、血管を健康に保つ
- 食物繊維を含む食品:大豆製品、緑黄色野菜(ブロッコリー、トマトなど)、きのこ類
- 注意点
極端な糖質制限は避け、バランスの取れた食事を心掛けましょう。
運動療法
運動はLDLコレステロールを減らし、HDLコレステロールを増やす効果があります。
- 有酸素運動:1日7500歩、週180分を目安にウォーキングやサイクリングを行う
- 筋トレと組み合わせるとさらに効果的
中性脂肪が高い場合の対策
原因
中性脂肪の増加は、主に以下の生活習慣が関係します:
- 過食・アルコールの摂取過多
- 運動不足
- 糖質の過剰摂取
食事療法
- 控える食品
- 糖質の多い食品(菓子、白米、白いパン)
- アルコール(男性20~30ml/日、女性10~20ml/日を目安)
- 積極的に摂りたい食品
- 魚類(EPA・DHA含有)
- 野菜・海藻類
運動療法
有酸素運動を中心に、毎日の生活に取り入れましょう。通勤や買い物の際に歩く時間を増やすだけでも効果があります。
薬物療法について
LDLコレステロールを下げる薬
- スタチン系薬:LDLを減少させる効果が高い
- 小腸コレステロール吸収阻害薬:コレステロールの吸収を抑制
- 陰イオン交換樹脂製剤:コレステロール排出を促進
中性脂肪を下げる薬
- フィブラート系薬:中性脂肪を抑制
- n-3系多価不飽和脂肪酸:血栓予防にも効果的
脂質異常症の症状とリスク
脂質異常症は自覚症状がほとんどありません。しかし、以下の症状が現れた場合は注意が必要です:
- 身内に心筋梗塞や脳梗塞の患者がいる
- 健診でコレステロールや中性脂肪の異常を指摘された
- メタボリックシンドロームが心配
脂質異常症の診療方針
- 生活習慣の改善
- 食事療法:栄養バランスの見直し
- 運動療法:週3回以上の運動
- 薬物療法
必要に応じて、個々の患者に適した薬を処方します。最近の薬は安全性が高く、動脈硬化の予防に効果的です。
脂質異常症は、日常生活の中でコントロール可能な病気です。早めの診断と適切な治療で動脈硬化や心血管疾患のリスクを減らすことができます。当院では個々の患者様に合わせた治療プランを提供しております。お気軽にご相談ください。