年齢を重ねるにつれて、「歩いていると足がしびれる」「立っていると腰が痛い」といった症状を感じる方が増えてきます。こうした症状の原因のひとつに、「脊柱管狭窄症」という病気があります。
■ 脊柱管とは
背骨は、小さな骨（椎骨）が積み重なってできており、その中心に「脊柱管」と呼ばれるトンネルのような空間があります。この中には、脳からつながる神経（脊髄）が通っていて、私たちの体のさまざまな動きや感覚をコントロールしています。特に腰の部分では、神経が枝分かれして「馬尾神経」や「神経根」となり、足や膀胱、直腸などにも関係しています。
■ 脊柱管狭窄症とは
脊柱管の内側が、骨の変形や靭帯の肥厚（厚くなること）、椎間板の飛び出しなどによって狭くなり、神経が圧迫される状態です。このような変化は、長年の身体への負担や加齢によって起こることが多く、中高年の方に比較的よく見られます。
ただし、レントゲンやMRIで脊柱管が狭くなっていることが分かっても、必ずしも症状が出るとは限りません。逆に、狭窄が軽くても症状が強く出る方もいらっしゃいます。
■ 症状の特徴
- 歩いているとお尻から足にかけてしびれや痛みが出てくる
- しばらく休むと楽になる（この繰り返しが「間欠跛行」と呼ばれます）
- 足の力が入りにくい、感覚が鈍い
- 排尿や排便に違和感を覚えることも（進行例）
また、首のあたり（頚椎）に狭窄があると、手先の細かい動作がしづらくなったり、足元がふらついたりすることがあります。
（間欠跛行を来たす疾患として、「閉塞性動脈硬化症（ASO）」もありますが、こちらは体位での状態変化は認めず、単に安静で改善し、下肢冷感・脈触知低下等の症状もあります）
■ 診察・検査について
まずは、問診と診察で症状の出方や範囲を詳しく伺います。姿勢による症状の変化なども確認します。
必要があれば、以下のような検査を行う場合もあります：
- レントゲン検査：骨の配列や変形の有無を確認します
- MRI検査：神経の圧迫具合を詳しく見るのに非常に有効です
（※当院ではMRI検査は行っておりませんので、専門医療機関へのご紹介となります）
■ 当院での対応について
当院には整形外科専門医はおりませんが、
診察の結果、MRIなどの詳しい検査が必要と判断された場合には、近隣の整形外科専門医のいる医療機関をご紹介いたします。
また、紹介先で「保存療法で経過をみましょう」となった場合には、当院にて内服薬や湿布薬を中心に、症状の緩和と再発予防のためのフォローを継続させて頂きます。
■ 保存療法（手術をせずに治療を進める方法）
脊柱管狭窄症の多くは、いきなり手術をするわけではなく、まずは保存的治療から始めます。
当院では以下のような治療を行っています：
- 消炎鎮痛薬（痛み止め）の処方
- 神経の痛みに対応する薬の処方（プレガバリンなど）
- 湿布薬などの外用薬の処方
※注射による神経ブロックは当院では行っておりません
■ 最後に
「歩くと足がしびれる」「腰の痛みが長引く」といった症状は、年齢のせいと我慢してしまいがちですが、正しい診断と適切な治療で改善できることも多い病気です。
気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
