インフルエンザ脳症は小児に多い疾患として知られていますが、成人でも発症し得る病態であり、年齢によってリスクの現れ方が異なる点は意識しておく必要があると感じています。

小児では、高熱を契機に短時間で意識障害やけいれんを呈することが多く、病態の進行が非常に速い印象があります。免疫反応が急激に亢進しやすい年齢特性から、発症早期の変化を見逃さないことが重要だと考えています。

一方、成人例は頻度こそ低いものの、基礎疾患や高齢を背景に発症することがあり、せん妄や意識レベル低下として現れる場合も少なくありません。そのため、感染症に伴う全身状態悪化として捉えられ、インフルエンザ脳症という発想に至りにくい点が、成人におけるリスクだと感じています。

ロキソニンを含むNSAIDsについては、インフルエンザ脳症を直接引き起こすという明確なエビデンスはありません。ただし、小児ではNSAIDs使用例で重症化が多かったとする報告があり、現在はアセトアミノフェンを優先する考え方が定着しています。これは薬剤そのものの危険性というより、サイトカイン過剰反応を主体とする病態との関係が完全には整理されていない点を踏まえた対応だと理解しています。

成人ではロキソニンが直ちに禁忌となる場面は多くありませんが、解熱により神経症状の変化が見えにくくなる可能性は否定できません。解熱の有無にかかわらず、意識や行動の変化に注意を払う姿勢が重要だと感じています。

インフルエンザ脳症の最大のリスクは「想起されないこと」にあると考えています。小児では進行の速さ、成人では診断の遅れが重症化につながり得るため、年齢を問わず神経症状の質的変化を丁寧に評価することが重要だと改めて感じています。

追記

インフルエンザ脳症の発症率

インフルエンザ脳症の発症率は、小児で明らかに高く、インフルエンザ罹患例の約0.1~0.3%とされています。特に乳幼児から学童期に多く、日本は報告数が多い国の一つ。

一方、成人の発症率は小児より著しく低く、明確な数値は算出困難ですが、疫学的には稀とされています。ただし、高齢者や基礎疾患を有する症例では発症や重症化がみられることがあり、頻度は低いものの見逃されやすい点が特徴と考えます