インフルエンザA型とB型:症状の「違い」にだけ焦点を当てて整理する
インフルエンザ診療では、A型・B型という分類が日常的に用いられる。
しかし実臨床においてしばしば問題となるのは、「型によって症状に違いはあるのか」という点である。
•A型とB型は「別の病気」ではない
国内外の臨床研究を総合すると、次の点はほぼ共通認識となっている。
• A型・B型で基本的な症状構成は共通
• 一方で、症状が強調されるタイミングや臓器系に偏りがみられる
• B型が軽症であると断定できる根拠は存在しない
つまり、両者の差は「質的差」ではなく表れ方の傾向差に近い。
•インフルエンザA型で目立ちやすい症状パターン
急峻な発症経過
A型では、
• 発症から短時間で高熱に至る
• 悪寒や戦慄を伴うことが多い
といった立ち上がりの速さが特徴となることが多い。
全身症状のインパクト
• 倦怠感
• 筋肉痛・関節痛
• 頭痛
これらの全身症状が前景に立ち、患者の主訴として強く意識されやすい。
炎症性サイトカイン反応の急激な亢進が関与している可能性が指摘されている。
呼吸器症状は後発になりやすい
咳嗽や咽頭痛は、発熱後に目立つようになるケースが少なくない。
初期には「風邪症状が軽い」ため、受診判断が遅れる要因となる。
•インフルエンザB型に多い臨床的特徴
発症が緩やかな例がある
B型では、
• 微熱〜中等度発熱から始まる
• 全身倦怠感が先行する
といった非典型的な立ち上がりを示すことがある。
消化器症状の関与
腹痛、下痢、悪心などの消化器症状は、A型と比べてやや高頻度とされる。
特に小児では、腹部症状が主訴となることも珍しくない。
回復までの時間が長引く傾向
解熱後も、
• 倦怠感
• 活動性低下
が遷延し、「治癒感が得られにくい」と訴えられることが多い。
•年齢層による症状の違いは、型差以上に重要
小児
• B型で消化器症状が前面に出やすい
• 発熱期間が長引く傾向
• 熱性けいれんは型による有意差なし
成人
• A型で急激な全身症状
• B型で回復遅延感が残りやすい
高齢者
• 発熱が明確でない場合が多い
• 食欲低下、意識変容、ADL低下が主症状となることもある
高齢者では型分類よりも非典型症状への注意が重要となる。
•重症化・合併症は型で決まるのか
肺炎、脳症、心筋炎といった重篤合併症について、
A型とB型の間に明確なリスク差は示されていない。
重症化に影響する主因は、
• 年齢
• 基礎疾患
• 妊娠の有無
• ワクチン接種歴
であり、ウイルス型そのものではない。
[臨床判断で意識すべきポイント]
• 症状のみで型を断定することは困難
• 「B型=軽症」という先入観は危険
• 経過・症状強度・背景因子を統合的に評価する必要がある
この考え方は、日本感染症学会・日本小児科学会の見解とも整合する。
まとめ
• A型とB型は症状の「出方」に傾向差がある
• 重症度を左右するのは患者側因子
• 型よりも個々の臨床像を重視すべき
インフルエンザ診療では、
「ウイルス型を見る前に、患者を見る」
という視点が何より重要である。