パーキンソン病が疑われる状況にもかかわらず、認知症薬のみで経過観察される症例を経験、その理由を考察しました。

まず、初期に運動症状が十分に評価されていなかった可能性があります。パーキンソン病では振戦が注目されがちですが、実際には振戦が目立たない例、とくに高齢発症例も少なくありません。無動、筋強剛、歩幅の狭小化、表情の乏しさなどは、加齢変化や廃用として解釈され、見過ごされやすい所見です。

次に、認知症症状が前景に立つ症例では、診断の方向性が早期に固定されやすい点が挙げられます。幻視や注意障害、遂行機能低下が先行すると、まず認知症として対応され、その後に運動症状の再評価が十分に行われないまま経過することがあります。

また、lewy小体型認知症とパーキンソン病は連続した疾患スペクトラムに位置づけられます。1年ルールは整理には有用ですが、臨床像を単純化しすぎる側面もあります。さらに、認知症薬により幻覚などが改善すると診断が固定化されやすく、その間にも動作緩慢や歩行障害が徐々に進行している場合があります。

これらの症例は誤診というより、評価されていなかった症状があった結果と考えられます。非運動症状への注意が先行し、左右差、安静時所見、筋強剛といった運動症状評価の基本が後回しになっていた可能性があります。

画像診断が不十分、あるいは評価が困難と判断した症例については、然るべき専門施設へ紹介します。

1年ルールとは・・

運動症状(パーキンソニズム)出現から1年以内に認知症が出現

→ lewy小体型認知症

パーキンソニズム出現から1年以上経過してから認知症が出現

→ パーキンソン病認知症